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[近田学長通信vol.12] 新年、心新たにして思うこと ~ゼロ次予防をめぐって

新春号の誌面を開くと、これからの社会の在りようなどを綴った文面が多い。医療関連記事に絞ると、『予防の時代』に入り、結局のところ『主人公は国民一人ひとり』というキーワードが目に飛び込んでくる。その昔から予防の概念は、第一次予防(生活習慣の改善・禁煙・適度な運動などによる健康増進・病気予防)、第二次予防(検診を受けて早期発見・早期治療)、および第三次予防(悪化防止やリハビリテーション)の3段階に分けられている。
健康日本21(第2次)以降、ゼロ次予防の文言が頻繁に出ている。ゼロ次予防とは、一次予防の手前で、人びとが馴染みやすい地域で、より望ましい人的・物的な環境を整えることである。換言して、一次予防が必要になる原因の原因になる環境を変えることによるものと説明されている。具体的には、気軽に相談してみたい・身近でウオーキングしたい・何かに挑戦してみたいと、住民が自発的に思える環境を整備していくことが、ゼロ次予防段階となる。このゼロ次予防が注目される背景には、国民全体の健康レベルの底上げをめざし、ひいては国全体の医療費など社会保障費を抑え得るという予想がある。
上記の予防概念を、身近な「まちの保健室」の活動と重ねてみる。本学で取り組む「まちの保健室」の究極の目標は、地域健康づくりの一つの場になることである。まさに、このことがゼロ次予防であり、地域包括ケアシステムの中に位置づくことを願って活動している。「まちの保健室」の活動内容からみると、来室者の個人に関わりながら生活習慣を振り返り、ミニ講話などをとおして健康増進のきっかけづくりを意図しており、これは第一次予防の活動になっている。また、本学は医療機関ではないものの、大勢の医療従事者が居る。したがって「まちの保健室」の活動項目は、血圧・BMI・骨量測定に始まり、各種の健康チェックを行っている。その結果によっては、医療機関に繋ぐ必要も出てきており、第二次予防の活動にも入ってきている。
このようにみていくと、「まちの保健室」は幅広い予防活動に取り組んでいると自負できる。あくまでも、活動の上位目標はゼロ次予防であり、健康チェックとともに親しみのもてる場でありたい。『住民の一人ひとりを主人公』にした取り組みであることを忘れてはならない。すると、本学独特の活動として取り組んでいる、『まめんなかえ』と声かけできる師範塾修了生の活動を、今後、どのように機能させていくかに鍵がありそうである。検討を重ねたいと、新年に思う。
鳥取看護大学
学長 近田 敬子
(2020年1月27日掲載)

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