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[学長通信vol.8] スピリチュアルケアに関する講演で学んだこと

1999年、WHO執行理事会で、世界保健機関憲章の前文の3つの「健康の定義」(身体的健康、精神的健康、社会的健康)に、4つ目としてスピリチュアルの概念を加えようと、論議された。しかし、宗教的な要素が強いので、総会では合意に至らなかったと聞いている。わが国においては、日本語にも表現しがたく、一般化されにくい状況であったが、近年、人間の尊厳の確保やQOL(生活の質)向上の必要性から関心は拡大し、その導入や研究が進んでいる。ところが何故か、わが国では終末期がん患者への適用が活発である。スピリチュアル概念は、必ずしも宗教的なものではないし、終末期がん患者のみに適用されるものでもないと捉えている。
この度、玉置妙憂氏(看護師・僧侶)の講演で拝聴したように、心の深いところにある魂が頭を持ち上げてくる(スピリチュアルペイン)状況において、ケアが求められてくるようだ。援助者は、その状況を酌み取り、傾聴・受容・共感できる魂を登らせてこないと、共鳴できないという論理になると捉えた。ゆえに、一般病棟等の看護実践おいてはスピリチュアルケアが普及しづらく、必要に迫られてビハーラ―僧やチャプレンという人々が、高度な研修を積んで活躍している現状である。
然しながら、本来、スピリチュアルの概念はスピリチュアルヘルスとして提案されたものである。超高齢社会において避けて通れない要素である。よって、ヘルスの概念で広く地域においても促進されないものかと思う。日本人に親しみのある言葉で、仏教用語ではあるものの生老病死(生苦・老苦・病苦・死苦)の概念がある。人間は、一生を通じて逃れられない根源的な苦悩を抱えて生きていく存在であり、誰でも人生の中で大なり小なり四苦八苦を経験している。これからは、人生のターミナル期を迎える人口が増大し、多死時代に突入する。この時代にあっては、当たり前に看護者の一人ひとりが、スピリチュアリティに関心を寄せ、日々のケアに繋げなければならないのではないだろうか。
以上から、看護基礎教育においても、その手立てを整えることが緊急に求められていると感じた。まずは、学生の人生観・死生観・スピリチュアリティ観を、年数をかけて育成していかなければならないことを確認した。
鳥取看護大学
学長 近田 敬子
(2019年10月15日掲載)

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